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広島高等裁判所岡山支部 昭和62年(行コ)1号 判決

岡山県倉敷市玉島中央町一丁目六-三六-二〇四

控訴人

株式会社玄場建築設計事務所

右代表者代表取締役

玄場年秋

右訴訟代理人弁護士

竹下重人

稲垣清

青木俊二

中田寿彦

岡山県倉敷市玉島阿賀崎二丁目一番五〇号

被控訴人

玉島税務署長

江本實

右指定代理人

宮越健次

石田實

北村勲

丸屋惠寛

土井哲生

大土井秀樹

佐下勝義

右当事者間の法人税更正処分取消請求控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決を取り消す。2 被控訴人が控訴人の法人税につき昭和五六年一二月二五日付けでした(一)控訴人の昭和五三年六月一日から同五四年五月三一日までの事業年度分に関する更正処分のうち所得金額一一八万一一一六円を超える部分、(二) 控訴人の昭和五四年六月一日から同五五年五月三一日までの事業年度分に関する更正処分のうち所得金額一七〇万九〇二三円を超える部分、(三) 控訴人の昭和五五年六月一日から同五六年五月三一日までの事業年度分に関する更正処分のうち所得金額一一九万二七一一円を超える部分、(四) 右三事業年度の各重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決三枚目裏二行目「支払った」を「原判決添付別表3記載の設計料収入脱漏額 一三六三万四七〇〇円から、控訴人が国立療養所邑久光明園(以下「邑久光明園」という。)の建築工事等に関し元請けの松賀建設株式会社(以下「松賀建設」という。)の工事の遅れを応援し、その応援工事(松賀建設からの下請け)を株式会社総社産業(以下「総社産業」という。)にさらに下請けさせ、その下請代金(外注費)として支払いをした後記九九〇万円の」と改める。

2  同五枚目表八、九行目「株式会社総社産業(以下「訴外総社産業」という。)」を「総社産業」と改める。

3  同五枚目裏四、五行目「国立療養所邑久光明園(邑久光明園」という。)」を「邑久光明園」と改め、六、七行目「松賀建設株式会社(以下「松賀建設」という。)」を「松賀建設」と改める。

4  同六枚目表五、六行目「に対応する」を「とされる金員からの」と改め、一一、一二行目「別表3記載の工事に関する」を「邑久光明園関係の工事の」と改め、末行の「はなく、」の次に「実際は、」を加える。

5  同六枚目裏三行目「履行として」の次に「玄場年秋から支払が」を加え、五行目「に対応する」を「とされる金員からの」と改める。

6  同八枚目表六、七行目「工事請負収入」を「工事請負代金の支払い」と改め、七行目「時期に」の次に「下請先に下請代金が」を加え、一二行目から末行にかけての「原告代表者から」を「玄場年秋(控訴人代表者個人)」と改め、末行の「工事代金」を「下請工事代金」と改める。

7  同八枚目裏一行目「に対応する」を「とされる金員から支払いがなされた」と改め、末行の「のどれとも対応するものではない。」を「とする金員から支出されたものではない。」と改める。

8  同一一枚目表一二行目「は否認する」を「中、玄場年秋が吉川清美から同人邸新築工事を受注したことは認め、その余は否認する」と改め、末行の「新築工事は、」の次に「玄場年秋が」を加え、同行の「が請負った」を「に下請けさせた」と改める。

9  同一一枚目裏一行目冒頭の「しかるに」から五行目末尾の「である。」までを削る。

10  控訴人の主張

原判決は、控訴人が邑久光明園関係工事を総社産業に下請けさせ、その下請け代金として昭和五四年五月期 三〇〇万円、同五五年五月期 四四〇万円、同五六年五月期 二五〇万円以上合計九九〇万円の支払いをしているにも拘らず、これを否定してこれらを各期の所得計算上外注費として損金の額に算入することを認めず、右支出金は、控訴人代表者個人が、昭和五四年に吉川清美から請け負った同人邸新築工事を、総社産業に下請けさせたことによる工事代金であって、控訴人が、邑久光明園関係工事を総社産業に下請けさせたことによる工事代金ではない旨の認定をしているが、事実誤認である。

右邑久光明園関係工事は、松賀建設の工事遅延による応援工事であって、控訴人が総社産業に下請けさせたものであるが、同社が工事に使用した人員、資材等を個別的に記録していなかったため、控訴人と総社産業が話し合い、右下請工事代金を九九〇万円とする旨の合意をし、税務対策上これを合理的に説明できるようにするため、たまたま控訴人代表者個人が、吉川清美から請け負い、小幡定夫に下請けさせた右吉川清美邸工事代金の見積金額がほぼ同金額であったことから、その見積書を利用し、その写しを総社産業に交付していたものである。なお小幡定夫は上下水道工事、電気工事等の許認可手続きをする資格を有していなかったので、吉川邸新築工事に付随する右工事の届書等に総社産業の名称を借用し、その手続きをしているが、その工事は、小幡定夫がしたものであって総社産業がしたものではない。

11  被控訴人の主張

邑久光明園関係工事に関する外注費とする控訴人主張の九九〇万円は、控訴人の総社産業に対する邑久光明園関係の下請工事代金ではなく、控訴人が、邑久光明園関係の下請工事代金を説明するために見積書を利用したとする、吉川邸新築工事の下請工事代金そのものであって、元請控訴人代表者個人の玄場年秋が、下請けの総社産業に支払いをした金員である。原判決はこれを正しく認定しており、事実誤認はない。

三  証拠

証拠は、原審記録中の書証目録、原審及び当審記録中の各証人等目録の記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の請求を理由がなく失当として棄却すべきものと判断する。

その理由は、次のとおり訂正、削除、加入するほかは、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一三枚目表一二行目から末行にかけての「原告主張の右各外注費の存否・額」を「控訴人が、松賀建設受注の邑久光明園関係工事につき控訴人主張の応援工事をし、これを総社産業に下請けさせ、その下請工事代金(外注費)を本件脱漏額とされている金員から支出したか否か」と改める。

2  同一三枚目裏五行目「に対応する」を「とされている金員から支出した」と改め、一一行目冒頭の「次に」を「かえって」と改め、同行の「ごとく」の次に「玄場年秋(控訴人代表者個人)の」を加える。

3  同一四枚目裏五、六行目「及び原告代表者尋問の結果」を「並びに原審及び当審における控訴人代表者玄場年秋の尋問の各結果」と改め、八行目「自己の受注先」を「下請けをして応援工事をしたその発注先」と改める。

4  同一五枚目裏九行目「法人税法二一条一項」を「法人税法一二一条一項」と改める。

5  同一六枚目裏一行目「右下請工事に関する外注費の支払」を「その支払い」と改め、二行目「可能性が強い」を削り、七行目「に疑問の余地が生ずること」を「極めて疑わしいこと」と改め、一二行目「及び原告代表者尋問」を「並びに原審及び当審における控訴人代表者玄場年秋の尋問」と改め、同行の「部分」を「各部分」と改める。

6  同一七枚目表一行目末尾の「はない。」の次に行を換えて「そうすると、本件脱漏額とされる金員から邑久光明園関係工事の外注費を支出したとの控訴人の主張は理由がない。」を加える。

7  同一七枚目表二行目冒頭「(二)」の次に「なお、本件脱漏額とされる金員中の」を加え、三行目「関係の」の次に「分につき」を加え、同行の「外注について」を「外注費が存在したか否かについて付言する。」と改める。

8  同一七枚目裏九行目「本件外注費」から一〇行目「について」までを「かえって、控訴人が外注費であると主張する金員は、以下のとおり玄場年秋が個人として吉川清美から請け負った同人邸新築工事につき、総者産業に下請けさせた際に支払った下請代金である。即ち、」と改め、一一行目「被告は」から同一八枚目七行目「よって案ずる、」までを削る。

9  同一八枚目裏三行目「に対応する」を「とされる金員に含まれる」と改める。

10  同一九枚目表一一行目「四七六万九二四円」を「四七六万〇九二四円」と改める。

11  同二一枚目表一一行目「その余」の次に「(原判決添付別表3記載の番号〈14〉の岡山市役所発注分等)」を加える。

12  同二三枚目表三行目「に対応する」から四行目「できる。」までを「とされている金員から簿外経費として外注費が支出されたことはないことが認められる。」と改め、五行目冒頭の(五)から八行目「認められる。」までを削る。

13  同二八枚目の説明書部分五行目「当額事業年度」を「当該事業年度」と改める。

二  そうすると、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高山健三 裁判官 相良甲子彦 裁判官 廣田聰)

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